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融通無碍~作品と商品

PRISMは今年4月20日で設立4周年を迎えます。
4周年の節目に考えたことなどを。

「素材にこだわる」、「国産にこだわる」、「手作りにこだわる」、「鮮度にこだわる」・・・・
この場合の「こだわる」は「妥協しないでとことん追究する」という意味で使っていると
思われるのですが、私は何となく違和感があるのです。「こだわる」って、こんなに
肯定的な言葉でしたっけ?

「学歴にこだわる」、「メンツにこだわる」、「処女にこだわる」とか、「ちょっとしたことを
必要以上に気にする」みたいに、少し否定的な意味で使われるのが本来だと思うん
ですね。

多くの中小企業の社長が、「○○にこだわってつくりました」とおっしゃるのですが、
そういう会社の商品がなかなか売れなくて困っている現実を目にします。その理由を
考えてみると、作り手のこだわりが過ぎて、市場に受け入れられないモノが出来上が
ってしまっていることが多い気がするんですね。

お菓子メーカーでいえば、「無添加にこだわって」「地元産原料にこだわって」「手作り
にこだわって」「デザインにこだわって」・・・こうして作っていくと、おのずとコストが高く
つき、価格を上げないと採算が取れなくなる。

社長は「うちのお菓子はとことんこだわったから絶対美味しい。だから、価値のわかる
人だけに食べて欲しい」と言います。キャッチコピーは「材料はすべて○○県産、無
添加、手作りの安心安全なお菓子」です。だから「良いものを作った。良いものを作る
にはお金がかかる。それを理解してくれる人は高い金を払ってくれる」と考えて、自信
を持って売り出す。

でも結局売れない。理由は、単純に高いから。おいしくても、高くて手が届かないお菓
子は商品としての価値がありませんよね。この社長が目指しているお菓子は「商品」
ではなく自己満足だけの「作品」なのではないでしょうか。

音楽の話で言うと、アーティストがCDを作るとき、歌詞や曲にこだわって、演奏にこだ
わって、とことん金を掛けて録音したCDが全く売れないことはよくある話。アーティスト
は本来、「作品」を作るのが仕事ですが、音楽マーケットの中では、「商品」として考え
なくてはなりません。

作品としては「良いもの」であるかどうかが大事ですが、アーティストがどんなに「良い
もの」を作ったとしても、「ちっとも買う気が起きないもの」であればそれは絶対にヒット
しません。逆に、タレントがテレビ番組の中でお遊びで作った企画物のCDが爆発的に
売れる、なんてこともよくあります。この場合、作品としては二流以下かもしれないけれ
ど、商品としては高い価値があった、つまり、売上は作品のクォリティには比例しない
ということですね。

企業が世に出すのは、「良い作品」と「売れる商品」のどちらも満たすのが理想。でも、
時として正反対の方向のどちらかを選択しなければならないときもあります。こんなと
き、小さな「こだわり」にとらわれすぎて大事な「企業の価値=収益を上げること」を放
棄してしまうのはとてももったいない気がします。

作り手の考える「こだわり」が本当に必要で価値があるかどうか、買う側の立場になっ
て冷静に考えてみましょう。「絶対、こうじゃなきゃいけない」ってことは、あんまりないと
思いませんか。こだわりはほどほどにしましょう。

松下幸之助さんは、“素直な心”の働きを“融通無碍”という言葉で説明することがあっ
たそうです。融通無碍とは「五条の橋の上で弁慶がなぎなたを振り下ろすと、牛若丸が
ヒラリヒラリと身をかわしつつ、スキを見つけてピシャリと一撃を加え、降参させた。この
牛若丸の身のこなしのようなものだ」そうです。つまり、ひとつの見方考え方にこだわる
のではなく、自由自在にものを見、考え方を変え、より良い判断をしていく。「素直な心
でいれば、どんな困難に直面しても、融通無碍に対処して、自らの歩みをスムーズに
進めることができる」と言われています。

世の状況がこれほど刻々と変わる中で、主義や信念を絶対に曲げない、というのは必
ずしも合理的な行動ではないと思います。

PRISM、5年目のテーマは「融通無碍」でいきます。

投稿者 prism : 2009年04月09日 20:41

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